ここ1年のアリーナには歓迎すべき点もあって、急襲とか雄叫びダメージミニオンがかなり増えた結果、平成の2-4マナ重視環境とはまた違うゲーム性になってるのは面白い 昔やってた人が戻ってきたら驚くと思う
— 佐藤九日堂 (@sato9kado_hs) 2020年6月30日
およそ1年前にこんなことを考えていたのですが、そこから更に急襲や雄叫びダメージミニオンが増え、この傾向がより強まったと感じています。
(他、本当に本当に多数)
これらの増加から、前とは違う視点でプレイしていく必要があると感じています。同じルールでありながら変化のあるゲームというのは楽しいものです。
ということで、新連載を始めていきましょう。「令和闘技場の思考」として、①プレイング、②ドラフト・マリガン…という形で、ここ1年半くらいの闘技場に起きた変化と、それに対応する戦略を紹介していきます! 今までの記事を読んでおく必要はありませんが、若干難解になるかもしれません。
まずは①プレイング編から書いていきます。
急襲・雄叫びダメージの追加による変化
2年くらい前の記事でこのようなことを書きました。
このゲームは構造的に、有利な側がさらに有利になるようにできています。試合の要となるミニオンは、召喚酔いのため出したターンに動けません。そのため先にミニオンを展開していた側が、都合の良い戦闘相手を選ぶことができ、より強い盤面を築くことが出来ます。(中略)この概念は、有利が雪だるま式に膨れていくことから、海外では”Snowball”と呼ばれていたりします。
現在では、このセオリーが通用しないことがあります。急襲にしろ雄叫びダメージにしろ、出したターンにすぐ都合の良い対象を攻撃することができます。そのため、不利な側の挽回がしやすく、また有利な側が必ずしも有利であり続けるゲームではなくなりました。ごく感覚的な表現になりますが、従来が「地上戦」だとしたら、今は優勢/劣勢が頻繁に入れ替わる「空中戦」のようです。
では、どうしたらよいか? というのがこの記事のポイントです。
有利な側、不利な側に分けてプレイで考えていることを整理しました。
- 有利な側:(今の有利を広げつつ)最終的にどのように勝つかを考える
- 不利な側:良いタイミングで急襲や除去を使う、つまりそうなるまでは温存し、可能であれば手札をうまく使える盤面を誘導する
それぞれの思考について、順番に書いていきます。
有利な側の思考
勝ち筋からのバックキャスト「どうやって勝ちきるか?」
早めに強いミニオンを出し、良いトレードを重ねるのがこのゲームの原則であることには変わりないです。ただそれを続けていても勝てるとは限らなくなった以上、具体的な勝ち筋を狙える時はそこに向かうのが有効です。中盤以降は「この試合にどうやって勝つか?」の意識を徐々に高めていきましょう。
大まかには①早期にライフを削りきって勝つか、②相手の手札/デッキを処理し切って勝つ のどちらかになります。両者の盤面、手札、自分の残りデッキと相談すると、どこかの場面でどちらの勝ち筋を取るべきかが見えてきます。①をやるなら重要でないミニオンを放置してヒーローを攻撃する、②をやるなら、程よく有利を維持する程度に展開を抑え、堅実にトレードを重ねる/手札1枚1枚を最も強く使える場面で使う ことになるでしょう。
実際には、この真ん中くらいの「盤面を膨らませ続けていたら、結果的にヒーローを攻撃する余裕ができ早めにライフを削りきれた」みたいなパターンもよくありますが、毎試合それで勝てるわけではありません。
良いトレードを重ねて盤面を膨らませることはどちらの勝ち筋にも近づきますが、必ずしも最短距離ではありません。時には速攻、ボードコントロールのどちらかへ大胆に振り切った判断を下すことで、今まで勝てなかった試合を拾うことができるようになります。
不利な側の思考
勝ち筋からのバックキャスト「どうやって逆転するか?」
同じように勝ち筋を考えることになります。ざっくり分けると ①どこかでテンポスイングを起こす、②相手の手が切れるまで粘るのどちらかですね。①を狙う場合除去札の使用タイミングを伺う、可能ならそれが刺さる場面を作ることになります。
例えば「フレイムストライク」を有効に使いたければ、相手に小粒を並べさせるあるいはこちらのミニオンとの戦闘を避けたいところです。そのためには前のターンに秘策を張ったり、隠れ身や「ドラゴンモーの飛行追跡者」のような相手が処理できない/したがらないミニオンを出したりするのが有効なプレイです。
良いタイミングがなさそうな場合、②に向けて泥臭く粘っていきましょう。もちろん残るリソースが相手より上回っている必要はありますが。
※盤面が劣勢であっても、レアケースとして「フェイスを削り切る」という勝ち筋が見えることがあります。特にハンターやデモハンであれば頭の片隅に入れておきましょう。
良いタイミングでの急襲・除去
不利盤面でも自由にトレード先を選べる急襲・除去カードはワイルドカードみたいな感じです。…というと誇張している気もしますが、使いどころに気をつけたいのは確かです。
使いどころは少ないマナで大きなマナのミニオンを倒せるとき、ここで処理しなければ望ましくないトレードをされるとき、あるいは自ヒーローの体力がきついときです。特にそうでなければ普通のミニオンを出した方が良い場面もよくみられます。
直感的には目の前の脅威を片付けておきたくなりますね。気持ちはよくわかります。
でも、本当に効率の良い処理なのか、処理しなかった場合にどうなるのか少し考えてみましょう。他に手札から出せる点がない場合、本当に除去が必要な時に困ってしまいます。
(有利・不利なときに共通する点)
警戒のデメリット
特定のカードを警戒するプレイングは重要です。ただし、警戒した結果それ以外の手で負けてしまっては意味がありません。(前にも書いた気がしますが、重要なので何度でも言います。)
闘技場での各カードの採用率は多くて0.5枚/デッキほどであり、各カードが2枚積みされたりする構築戦の感覚で警戒するとやりすぎになります。構築もプレイする人は特に気をつけましょう。
特定のカードの代わりに普通にミニオンを展開されたり、別の除去が飛んでくるときに有利を維持できるかを考えます。もしそれで負けるようなら、警戒をせず突っ張るのが最善であることが多いです。特に不利なときは細い勝ち筋に賭けることが重要なので、大胆な突っ張り方をします。
警戒を強めるケースとしては、①同じような効果の複数のカードが想定される場合や ②相手のプレイが露骨な時 でしょうか。
①としては例えば、現環境(2021年7月)の対シャーマンでは全体3点除去が多く警戒する価値があります。
②はやや難しいですが、例えば「魂裂破」を持っているウォーロックが前ターンにパスに近い動きをする、「ファイアーボール」を持っているメイジが頻繁にこちらのヒーローを殴ったりする、というものがあります。かなり経験と勘が求められる判断なので、初めのうちは気にしなくて大丈夫です。
カードドローのタイミング
今の手札ではこのターンや次のターンで強い動きが見込めない時は、無理に盤面を膨らませることではなく、カードドロー(発見含む)にマナを割いても良いでしょう。ドロー/発見したカードがその場面に合っていれば、後からでもテンポを取り返せる可能性が高いです。特に手札に急襲や除去が多い場合はそうです。
具体例
8-2の試合。後手4ターン目にどうしますか? 相手は4/3でこちらのヒーローを攻撃し、ヒーローパワーと「堕ちた英雄」を召喚しました。
・「穴掘りスコーピッド」で相手の3/2を除去します。「雄叫びダメージは大事に」と書きましたが、他の動きが弱いときはちゅうちょなく使います。 ・まだ相手ヒーローの体力が28もあるのですが、長期戦が苦手なデッキ・手札であり、また「貫通弾」もあるので早期にライフを削り切るプランを取ります。「紡ぎ手」はヒーローを攻撃します。 (筆者が考えるプレイ:クリックして開く)
2ターン後の盤面。相手の手札には前とその前のターンに発見した呪文が2枚あります。秘策はこのターンに2/2によりデッキから出されたものです。
・召喚時に秘策が反応しなかった場合「オアシスの味方」を疑い、豚飼いで召喚された豚は攻撃しません。 ・伝えたい論点は「フレイムストライク」を警戒して5/5で4/3を攻撃するかどうかです。そうした場合返しのターンで5/5,グールともに処理されるでしょう。手札もデッキも軽く、相手のライフ20を削るのには不十分であるため、警戒したところで負ける可能性が高く警戒する意義は薄いです。 ・一方ヒーローを攻撃した場合、相手の残りは15点であり、こちらの盤面に加え「貫通弾」(だいたい4点くらい)とヒーローパワー(2/ターン)で勝ち切れる可能性がそれなりにあります(盤石ではなくけっこうギリギリな感じですが)。ここはヒーローを攻撃しました。(筆者が考えるプレイ:クリックして開く)
・豚飼いを出したところ、秘策が「鏡の住民」でした。「死肉食いのグール」を出し、豚でコピーされた豚飼いを攻撃しました*1。
次のターン。幸い「フレイムストライク」は打たれず、2/2とヒロパでグールを処理、4/3,1/2は相変わらずフェイスを攻撃してきました。
(👮♀️重要👮♀️)終盤はまずリーサルがないかを考えます!! 無いですね? 1点足りませんね? ではプレイを考えましょう。 ・ここの論点は「ファイアーボール」を警戒するかどうかです。基本的に単一カードを警戒することはあまりしないのですが、先ほどから4/3が立て続けにこちらのヒーローを攻撃しており若干警戒度を高めたほうが良いかと思いました。また、「貫通弾」で4/3を処理しても次のターンに問題なく勝つ見込みが高いため、ここは「ファイアーボール」を警戒する余裕があると判断しました。(この場合「ファイアーボール」+ヒーローパワー+ミニオンでも11点しか出ないため、それなりに安全です)(筆者が考えるプレイ:クリックして開く)
最後に
正直難しいです。
複雑かつ場合による判断ばかりで、読んでいてわかりにくかったら恐縮です。ただプレイングってそういうものでして、そういう時にそもそも「何を考えればいいか?」を示しておきたくてこの記事を書きました。ここに書いていることを丁寧に考えていくと、目の前の試合に勝てるのみならず今後の上達に役に立つのではと思います。
最近は相手の手札の警戒、数ターン後の展望を求められる機会が増えたため、格段に難しいゲームになっています。ですが、スキルが報われるものでもあり考える楽しさもあります。こういうゲームに面白味を感じるような方の役に立てればうれしいです。
私も偉そうに記事を書いていますが、この難解な環境で常に最適なプレイングをしているとはとても言い切れません。精進あるのみ、一緒に上達してランキングの高いところでお会いしましょう。
追記)配信をはじめました。 この記事で書いた「場合による」ところをどう判断するか、私や他の方の配信が一つの参考になれば。
追記2)近年の変化はプレイングで完結する話でなく、使うカードを選択するドラフトやマリガンでも戦略が変わってきます。ということで次回以降はそのあたりを書いていきます。