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ハースストーンの闘技場・バトルグラウンドを勝ち抜く戦略

海外プレイヤーの言葉に学ぶ:なぜ毒構成は「詐欺」と呼ばれるのか

呼び方にはプレイヤーの思考が宿る

バトルグラウンドの構成名は、たいてい使うミニオンやメカニズムで決まる。ディープブルーナーガ、超電磁メカなどが代表例だ。ところが英語圏の構成名には、一つだけ雰囲気の違う言葉がある。

 

Venom Scam である。

直訳は「毒詐欺」。詐欺の中でもなんかセコいニュアンスがある言葉で、意訳をすれば「毒によるズル」を意味する。

 

HSReplay.net の構成リスト。だいたいはカード名やメカニズムなのに、Scamだけが比喩。

(補足)バトグラは配られたミニオンを組み合わせ、自分の盤面を強くするゲームである。よく使われるミニオンの組み合わせを、プレイヤーたちは構成と呼ぶ。

 

構成名を含むゲームの非公式用語には、これまで遊んできたプレイヤーの感情や考察の痕跡が残っている。この記事では私が好きな英語圏のバトグラ用語をいくつか紹介し、そこから見えてくるプレイヤーたちの思考を紹介する。

 

Scamは構成名なのに悪口

冒頭で触れた通り、この名付け方は独特だ。他の構成はたいてい公式のキーカードやメカニズム名から名前がついている。ところがScamだけは、遊んでいる人がどう感じるかという感想、もっと言うと悪口が名前になっている。

バトグラは本来、ミニオンを大きく育てて戦うゲームだ。最初はせいぜい10程度の攻撃力・体力しかないミニオンを成長させ、最後には数百から数千の能力値まで育て上げて7人のプレイヤーと競い合う。

 

しかしscam戦術が使う毒袋ミニオンは、どんなミニオンでも一撃で倒す能力である。「バトグラはミニオンを育てて戦う」というゲーム性、ともすれば規範意識を真っ向から否定する。

特に育成をうまく進めて勝ちを確信した人に対しては、その勝算を裏切るような構成でもあって、少し騙しのニュアンスを含む。だからずるくて、悪口の対象になるのだ。

出遅れたときによくやるScam構成。2位を取れて万々歳。

 

海外のHearthstone公式掲示板には、"Poison/Venom is unfair in BG"(バトグラで毒は不公平だ)というタイトルで、おそらくはscam構成にscamされたであろう者の怨嗟のこもったスレッドもある。こういった感情を揺さぶる性質が、一風変わった構成名で呼ばれ続ける理由になるのだろう。

 

 

そして実践的な話をすると、このscamという言葉のイメージを念頭に置くことで、この戦術を選ぶべきタイミングが見えやすくなる。「相手より成長が出遅れている。まともにやっても勝てないなら、もうずるいことをするしかないじゃん」という思考の流れが、構成の名前としっかりかみ合っている。

 

こういうふうに、良い比喩は上達を助けてくれることがある。たとえば包丁を持つときの「猫の手」、格ゲーの「置き技」のような言葉があれば、細かい手順を説明されずとも一語でイメージを持つことができる。

「毒構成」という言葉だけを知っていた頃より"Scam"という概念を持ってからの方が、この構成を自然に、かつ楽しく選べるようになった。これが、私がこの表現を好きな一つの理由だ。

 

他のゲームを遊ぶと見える景色

海外の用語には、もう一つまた異なる面白さがある。

 

このゲームで使われる言葉はすべてがゼロベースで生まれたものではなく、類似するゲームから借用されることもある。

バトグラというゲームは、麻雀とカードゲームを足して2で割ったようなものだと思っている。酒場に配られたミニオンを選んで、強い手を作る要素は麻雀に近い。一方でカードそのものに効果があり、相性の良い組み合わせを探っていくのはカードゲーム的といえる。

そういうゲームだから、プレイヤーたちはしばしば似たゲームの用語を転用することがある。

 

「受け」と "enabler"の借用

日本語では、コンボの片割れになるミニオンを「受け」と呼ぶことがある。今すぐ完成形になるわけではないが、次に引くミニオン次第でなんらかの構成へつながるカードである。
これは麻雀に由来する考え方で、ミニオンを牌、構成を役に置き換えればそのまま成立する。

 

それに近い概念として、英語圏には"enabler"という表現がある。構成を「可能にする」カード、という意味だ。

Magic: The Gatheringの、配られたカードでデッキを組むリミテッドでよく使われる言葉で、特定の戦略やシナジーを成立させるカードを指すようだ。

 

すなわち、日本語圏と英語圏で親しまれている別のゲームから別の言葉があてがわれている。ただしこの概念は完全には一致せず、それぞれのプレイヤーがどのゲームを経由して、どの言葉で考えてきたかによって、同じバトグラの見え方が少し変わることがあると思う

言語学には「人間の思考は、使う言葉による影響を受ける」という考え方があるようで(サピア=ウォーフの仮説)、大げさに言えば今回の事例もそれに当てはまるのかもしれない。

 

同じように、たとえばShadowverseから来た人が「くっつき」とか「面数」という独自の概念でバトグラを議論していたことが印象に残っている。そこには、各々のプレイヤーがこれまで遊んできたゲームに特有の視点が出るもので、そこが面白いし、上達のために他の言語圏やゲームコミュニティの概念を知りたくもなる。

 

「受け」と "enabler"の違い:逆から引いてもよいか?

さて、この2つの概念の違いとは何か。

日本語の「受け」は、ミニオンを引く手順が逆になることをある程度許容する。

(補足)麻雀で3つの連番の手を作るとき、3→4→5or2 と引いてもよいし、5→3→4 と引いてもよい。後者は前者よりも最後の牌を引き当てられる確率が低い手順だが、それでも組めないことはなく、順番に関して寛容な方である。

 

他方で"enabler"は、構成の入口になるenabler と、それがいるときに強く使える"payoff"(報酬になるカード)の役割をはっきりと切り分ける。

例えばメカ構成であれば、「スクラップ・スクレイパー」は単体性能を持ちながら構成の入り口になるenabler、「独創的な発明家」は超電磁供給を持っていて初めて活躍するpayoffという整理だ。

スクラップ・スクレーパー独創的な発明家

 

 

実態は二つの間にある

「では、どちらの概念がより正確か?」と気になる人もいるだろう。
この場合は片方が優れているとはいえず、バトグラにおける実態はこの二つの間にあるのではないか。

 

バトグラのミニオンの中には、単体でそれなりに仕事ができるカードと単体では活躍しにくいカードがあり、前者が受け(enabler)に向く、後者は受けがいないと取りづらいという傾向はある。

ただし実戦では順序が逆になることだって珍しくないし、キルボアのように石供給と石強化の両側から参入しうる構成もあったりして、どちらがenablerでpayoffか一概には言い切れない。

ブリスルメインの叩き直し職人針だらけな笛吹き

ニワトリが先か、卵が先か

 

こういった実践例を考えると、バトグラのミニオンにはenabler 、payoff的な役割の濃淡があるが、逆(payoff)から取っても成り立つことがある、というのが実態だ。

引く順序の前後に寛容な受けと、役割をはっきり切り分けるenabler/payoffという概念は、この実態を両側から挟み込んでいる。

 

これまた実用性のある概念だ。受けの考え方に慣れた日本のプレイヤーにとっては、どのミニオンが enabler、 payoff かを意識的に切り分けてみることで、新たな視点が得られるはずだ。
「何を取ると何が取れるのか?」「逆にPayoffから取る選択肢はリスクに見合うのだろうか」といったように、構成の流れをはっきり切り分けると、バトグラをより深く理解できるのかもしれない。そういう気付きを得たくて、たまに海外のコンテンツを漁ったりしている。

 

Scamのもう一つのずるさ

そしてもう一度、先ほどのscamに戻る。

venom scamがずるいのは、でかいミニオンを倒せるからだけではない。実はscamは通常の構成とは異なり、特定の「受け」ミニオンを必要としない。

 

トッププレイヤーのJeef が監修するHSReplay.netでは、構成ごとに典型的なenablerとなるミニオンが解説されている。それによるとscamの enabler は、なんと getting outscaled(意訳:盤面の成長が他より遅れていること)と書かれている。

enablerなどない。正面からサイズ勝負をしても勝てない状況から入れることが、Scamの特異性を示している。

HSReplayより。普通、ここにはミニオンの名前が入る

 

もちろんscamの中にも細かいコンボはある。しかし受けや enabler というバトグラの根本的な概念を意識しなくても戦えてしまうことが、また道理に反していてずるいと思う。この無法さも言い表せるのが、私がscamという表現を好きなもう一つの理由だ。

 

海外の言葉で宝探し

こうした非公式用語は、当然ながらゲームがリリースされた当初からあったわけではない。

 

プレイヤーたちが実際に遊ぶ中で毒にミニオンを破壊されて、勝つために構成の組み方を考え抜くうちに、少しずつ生まれていった言葉である。
こうした用語には、やりこんだ人たちがバトグラをどう捉えているのか、その痕跡がどうやっても残る。

 

海外の用語を知ると、日本語ではまだ名前がついていない感覚が見えることがしばしばある。リリースからまだ6年のゲームであるから、言語圏別の用語が完全には混ざり合っていなくて、そこに宝探しの余地がある

 

勝ちたいだけならばもっとよい近道があるだろう。
しかし私はこういう文章を書く人間でもあるので、こうした言語圏ごとの概念の違いと、それによって新たに見えてくるバトグラの捉え方を興味深く思っている。

かつてなく変な切り口の記事になったが、こんな話を面白がってくれる人がいればうれしいし、「こういう例もあるよ」という方がいたらぜひ聞かせてほしい。

 

 

 

参考・関連リンク:

JeefHS, Direction Explained By a Pro | Hearthstone Battlegrounds Guide


今回紹介したenablerの概念と、構成を決めるときの考え方を詳しく説明した動画。解説しているのは世界トップクラスのプレイヤー、jeef。

 

HSReplay.net, Battleground Comps

構成ごとのTierやコアになるカード、入り口(Common Enabler)が網羅的に解説されているありがたいサイト。とても有益。

 

なぜ初手の「無害なボンクラ」は強いのか? ――バトグラで重要な「受け」の話

筆者が以前書いた、日本語の「受け」の概念についての解説。

 

ゆる言語学ラジオ, 「言語が思考を決定する」。サピア=ウォーフの仮説はなぜ生まれた?

筆者が最近はまっているチャンネルで、この記事を書いた動機。先ほどさらっと紹介した「サピア=ウォーフの仮説(Wikipedia)」を、言語学を知らない人にもわかりやすく説明している。

画面右上のセクションの名付け方が好きで、この記事のセクションもそれをリスペクトして名付けた。



海図, ゆる言語学ラジオ 水野太貴はなぜハースストーンをプレイするのか

参考文献ではないのだが、上の動画の水野さんに関連して面白かったので紹介。この記事で取り扱った非公式用語とはまた異なり、ハースストーン公式の英→日翻訳の面白さがウィットに富む文章で語られている。

競う人、憧れる人、推す人:バトグラ最強決定戦2026が見せたもの

もう5年半ほど前のことでしょうか。
最初期のバトグラシーンは、強者たちの「顔」が見えない世界でした。

強者について知っていたことはレーティング、おぼろげに見えるプレイスタイル、あとはTwitterアカウントくらいです。今ほど配信者は多くありませんでした。
だから強者がどんな人なのか、なぜそんなにストイックに戦い続けられるのか、そういったことは全く知らずに戦っていました。

 

選手の「顔」が見える大会

今回のバトグラ最強決定戦2026を見て、「バトグラ勢も本当に遠くまで来たものだ」と心から感じます。
5年前にはほとんど見えなかった、強者たちの個性や人となり。それを見せるための努力がきめ細かく行われた、素晴らしいイベントであったと思います。

この大会期間を通じて、トッププレイヤーのことがもっと好きになった人も多いんじゃないでしょうか。

 

この大会には文字通り選手の「顔」を映すカメラがありましたが、それだけではありませんね。

2回にわたって行われた選手紹介とインタビュー企画、選手の実況席でのコメンタリー、個性あふれるイラストなどなど。人気の配信者にも、普段表に出ない強者にも、スポットライトが当たっていました。

とても勉強になるし、受け答え方には個性が出て面白かったです。
特徴を捉えたイラストも素敵。

 

運営スタッフのみなさまのリスペクトあふれる取り組みと、それに応えた選手たちに心から敬意を表します。

「最強決定戦」と銘打つ以上、その主題は選手の卓越したプレイなのでしょう。それでも、こういったプレイ以外の個性を合わせて見せる取り組みは、バトグラがいろいろな人に親しまれることにつながるのではと思います。

 

競う人、憧れる人、推す人

この大会をたくさんの観客が観ていましたが、選手への敬意の形はいろいろだと思います。ライバルとして「競う人」、いつかなりたい姿として「憧れる人」、自分ではあまり回さないけど観戦中心で「推す人」、他にもいろんな人がいますし、それが良いことだと思います。
なぜなら、他のゲームやスポーツなどを見ても、競技シーンは決してガチ勢だけが形作るものではなく、カジュアルにプレイする層や見る専門の人を巻き込んで盛り上がっているものだからです。

 

5年前、スクリーンネームとレーティングだけが見える世界のコミュニティで目立っていたのは、情報交換や大会参加を欲する「競う人」だったと思います。
でも、最近のバトグラコミュニティには「競う人」だけじゃなくて、多くの「憧れる人」や「推す人」が集まっているような気がしませんか? あの頃から配信者が増えて、彼らの人となりが慣れ親しまれるにつれて、「憧れる」「推す」という敬意の形もおのずと生まれてきたように見えます。

 

新しい風、吹いていました

これは私が外から見た印象なのですが、今回のイベントを中心になって企画された方のうち、risucoさんやぬりっちさんはまさにそういう楽しみ方を想定している、あるいはご自身でもしている人なのかも。
お二人が大会の記念品として用意されていた選手イラストのステッカーやアクスタ、写真撮影用のうちわとかって、まさしく「推し活」文化の象徴ですよね。

バトグラにもそういう新しい風が吹いてきたのかと、おじいさんはしみじみしています。

なぜか解説者のうちわもあった。誰得??(ありがとうございます)

 

また、運営のもう一人であるレヲランガさんは5年ほど前でしょうか、配信者にWebカメラをプレゼントしてまわり、文字通りトッププレイヤーの「顔」が見えるようにしていた人だと記憶しています。もしもその頃からこんな未来を見ていたのだとしたら、その先見性にはひれ伏すしかありません。

 

そんなお三方が中心となって作り上げてくださったこの大会は、「競う人」を満足させるハイレベルな闘いの場でありつつも、「憧れる人」、そして「推す人」もあわせて惹きつけたのではないでしょうか。
今回のイベントをきっかけに、もっともっとガチ勢以外の輪も広がっていくのでは?そんな予感がしました。

 

解説を引き受けた経緯

ここからは、少し自分の話をさせてください。

3年ほど前から、思っていたことがありました。

それは、「上手い選手ってかっこいい」という個人的なリスペクトを、「競う人」以外のカジュアル勢にも広く伝えられないかということです。これが、当サイトで時々上がる選手紹介記事の発端になっています。

当時、「ロビーレジェンド」という公式の世界大会の参加枠が縮小し、自分は一度出場を諦めました。それでもなお出場権利を獲得したプレイヤーたちは本当にすごい選手でした。

 

ただ、どうしても大会で注目されるのは、「日本人」が勝ったのか否か、そして過程よりも結果、というところになりがちだと感じていました。

それも悪いことではありません。でも、もし誰かの「日本人は勝った?」という疑問がより個人的な「○○さんは勝った?」に変わったり、試合結果だけじゃなくてそれに至る素晴らしいプレイに目を向けてもらえたりしたら?
ライトに遊ぶ人が選手たちに「憧れる人」になって、ゆくゆくは一緒に「競う」仲間になってもらえないか。私のイベント紹介記事は、そういった思いから生まれていました。

 

さて、今年2月の話です。
そんな記事をことあるごとに書いているうちに、この大会の解説の依頼が私のもとに届いたのです。

これまでバトグラで解説をした経験はなく、「運営の人も変わった人選をするなあ」とまるで他人事のように思っていました。
それでも、私がこれまで共有したかった「上手い選手ってかっこいい」という敬意を、文字以外の媒体で、それも多くの人の前で伝えられる機会であることは確かでした。
また、運営の3人とはそれぞれ面識があり、私の何かしらを見込んで頼んでくれているのだろうという信頼もありました。

 

そういう考えで、今回の解説を引き受けることに決めました。

 

正直、喋りは得意ではないという認識を持っていました。実際、終わってみれば発声、着眼点、言葉の使い方など、多くの反省点が浮かんでいます。

それでも、始まる前のガチガチな緊張は、最強のプレイヤーの戦いを私自身が心底楽しんでいるうちにほぐれていったものです。気がつけば、選手たちの優れた技術を伝えることに集中できるようになりました。

 

最強は選手のみならず

その過程では、最強の相方であるおやつさんの実況の「妙」に大いに大いに助けていただきました。同じ場所で掛け合いができたことを誇りに思います。
配信画面もすごく見やすかったですよね。レヲランガさん作成の選手情報、ぬりっちさん作成のロゴやフレームと、選手カメラ担当、観戦モード担当のスタッフさんのすばらしいお仕事ぶりが結集。必要な情報が一望できました。

 

おかげさまで、めちゃくちゃ解説しやすかったです。

なにもお願いしていないのに、ドラゴン構成と当たった時にエヴォーカーのバフ量を表示してくださったりしていました。

ファンによる非公式イベントだからこそ、こういった配慮が行き届くこともあるのかもしれません。

 

この大会が新たに見せようとした選手の人となりと、選手がずっと前から磨き続けている技術。その両方が見えた素敵な大会でした。

私が解説席でお話ししたことは後者の技術へのささやかな橋渡しで、言うまでもなく主役は選手たちです。それでも、誰かから誰かへの「憧れ」や「推し」につながったのであれば、とてもうれしく思います。

 

画像

そんなことを考えながら、解説席を去ってレーティング戦の世界に戻るのでした。同卓することがあれば、楽しく競い合いましょう。

装飾品環境の初手の選び方:コイン得より大事なこと

バトグラの初手といえば「コイン得」ミニオンが強い、というのが従来からのセオリーです。ただ、装飾品環境ではコイン得と同じかそれ以上に重要な基準があると考えています。

 

この記事では、装飾品環境ならではの特徴を説明し、現時点(2026年5月1日)のグレード1ミニオンを評価していきます。

 

装飾品環境ならではの基準

強いグレード1ミニオンは、以下の特徴のどれかを持っています。

  • ①序盤の戦闘で負けにくくライフを守れる
  • ②コインを生み、3ターン目の2体購入を可能にする
  • ③強い最終構成に繋がりやすい

従来の環境であれば、特に重要なのは②の要素でした。しかし現在の装飾品環境では、③の優先度が大きく上がっています。

 

なぜか?

現環境の主役である「装飾品」にはいくつかの出現法則があります。その中でも最も重要なものは、「種族指定の下級装飾品のうち一部は、その種族を2枚以上持っているときにのみ出現する」ということです。(けっこう雑な要約)

※詳細を知りたい人は、Beerbrickの翻訳を見てください。

beerbrick.com

 

このルールの下では、初手の1枚がその種族の下級装飾品を誘導し、最終的にゲーム全体の方向性を決めることが珍しくありません。

そんな環境ではコインを1枚稼ぐより、環境で強い構成への入り口に立てていることの方が重視されます。装飾品環境の初手選択では、「どのカードを取ると、どの構成に向かえるか」を強く意識することが大切です。

 

パッチ前後で強さはこれだけ変わる

では、具体的にどのグレード1ミニオンが強いのでしょうか?
下の図は、直近のパッチ前(20260428)とパッチ後(20260501)でグレード1ミニオンの平均順位ランキングがどう変化したかを示しています。

Firestoneの公開データをもとに作成。1ターン目にそのミニオンを使った場合の平均順位)

 

注目したいのは、大きく順位が上がったカードです。

  • Upbeat Frontdrake(アップビートなリードボーカ竜):10位→2位
  • Twilight Hatchling(トワイライトのヒナ):14位→6位

逆に大きく下げたのは以下の2枚。

  • Dune Dweller(モリモリな砂丘):1位→9位
  • Manasaber(マナセイバー):5位→15位

面白いのは、これらのカード自体には何の調整も加えられていないことです。
主にグレード3以上のドラゴン・キルボアが強化、一方でエレメンタル・悪魔・獣が弱体化されていて、これによる最終構成のパワーの変化が初手の平均順位に影響を及ぼしています。

(調整対象カードの告知。この画像には記載されてないのですが、獣で重要なポールトロンが削除されたのも大きなポイントです)

 

単に種族の立ち位置が変わるだけで「リードボーカ竜」や「トワイライトのヒナ」が上位に駆け上がり、逆に獣のマナセイバーやエレメンタル2種が順位を落としているのが装飾品環境ならではの変化で、初手の種族の重要性を示しています。

 

カード別評価

一般論はここまでです。ここからは、具体的に現環境のグレード1ミニオンの位置づけと、それが強い理由、あるいは弱い理由を説明していきます。

()内はFirestoneでの21種類中の順位を示しており、高い順に解説していきます。

※統計上のブレがあるので、順位2~4個の差は誤差の範囲かと思います。一応高い順に解説するのですが、疑わしいカードもいくつかあり、また特有のバイアスもあるので信じすぎないようにしましょう。

大まかに最上位、上位、中堅、下位といった枠で捉えるくらいが丸い気がします。

 

【最上位】

 海鮮丼屋(1位/全21枚)

海鮮丼屋

そこそこ強いナーガ構成への受けになります。しかも、ほぼすべてのグレ1に対して戦闘で負けないのが強いです。

1位に値するかは正直疑っているのですが、少なくともトップ5レベルの強さはあるでしょう。ただし、強さの源泉はナーガ種族にあるので、獣のみが出る卓だと中堅くらいだと思います。

 

アップビートなリードボーカ竜(2位)

アップビートなリードボーカ竜

グレード1にもかかわらず、8gまでにドラゴン2枚を引き込めるのは破格だと思います。

パッチ前はドラゴン構成が最下位クラスだったので弱かったのですが、パッチでドラゴンの立ち位置が改善したので評価が急上昇しました。

とはいえ、ドラゴンの下級装飾品には低パワーのカードも多いので、下級装飾品選択においてはむやみにドラゴンに向かおうとせず強めの中立を検討するのがポイントです。

アライアンスのキーホルダードラゴンウィング・グライダー

この辺は弱すぎて罠だと思ってる

 

クロマティック・ティアブロンズ・クロマドレイクグリーン・クロマドレイク

これは強い。ドラゴンが2体いなくても出現するけど、ドラゴンが集まってると黄色と緑を強く使えるのがうれしい

 

 

川渡しの船頭(3位)

川渡しの船頭

とても優秀なコイン得カードです。これまで述べてきた強い種族への方向性が得られるかは不確実ですが、好きな時に1コインを捻出でき、しかも強めのグレ1ミニオンが残る可能性があるのは、他のコイン得ミニオンと比べても頭一つ抜けた性能です。
記事のタイトルとは逆行しますが、こいつに限っては最優先で取ってもいいくらいには強いです。

無害なボンクラ(4位)

無害なボンクラ

優秀なグレード2~4アンデッドとの相性の良さが偉く、またアンデッド種族自体がTier1.5といえるレベルに強いので、少なくとも平均よりはかなり良いミニオンだと思います。

スカーレット・スカルダストボーン・デバステイター疫病ランナー

強いカードをうまく使えるのはえらい

 

【上位~中堅】

憤怒の織屋(5位)・不吉な予言者(8位)

憤怒の織屋不吉な予言者

悪魔はパッチで弱体化されましたが、依然としてTier1クラスの種族であり、その入り口になることが強い。
さらに、「憤怒の織屋」は「ソウル・リワインダー」他が引けたときに構成の軸になりうるので将来性が高い、「不吉な予言者」はやや不定格ながらコイン得になることが持ち味で、それぞれ種族だけでない付加価値を持っています。

個人的所感ですが、「織屋」はトップ4に入れてもいいかも。逆に「予言者」は戦闘面で弱く、もう少し下かもしれません。

 

バリバリサイクロン(7位)・モリモリな砂丘(9位)

バリバリサイクロンモリモリな砂丘

上の悪魔と同じ理由で、かなり強い部類です。エレメンタルはナーフされたといえど、いまだTier1レベルの種族のため、その装飾品を誘導できるのはえらいです。
ただし自身が中盤のシナジーを生むわけではなく、エレメンタルであること以上の価値を持たないので、上位陣と比べると見劣りします。

 

トワイライトのヒナ(6位)

トワイライトのヒナ

これが6位に値するかはわかりませんが、10位よりは上に位置する強さがあります。

ドラゴンが悪くない種族なのは先ほど書いた通りですが、別に良くもなく種族面の加点は無しです。また、序盤の強いコンボ相手が「咆哮する徴兵官」くらいしかなく「ボンクラ」や「織屋」のような強い受けにはなっていません。

このように将来性は低いですが、全てのグレ1に対し負けないのでライフは守りやすいです。そういう意味で、他の特徴のないグレ1よりは優先すべきだと思います。

咆哮する徴兵官

 
大食いトログ(10位)
大食いトログ

「トワイライトのヒナ」をより無味無臭にした感じです。コンボへの発展余地は皆無ですし、装飾品には(ほぼ)結びつかないので、これまでのお話を考えると決して強いカードではありません。

ただし、7-8コイン目あたりの4/4バフは決して軽いものではなく、確かにこれによってライフを守れる時間帯はあります。早上げの可能性が低いと判断される場合や、横がどうしようもなく弱い場合は取ることがあるかも。

 

南海の大道芸人(14位・参考)

南海の大道芸人

コイン得なので悪くはないのですが、柔軟性に劣ります。5コイン目に2コス雇用呪文が見えたとしてもうまく使えないのは、「船頭」と比べてかなり弱いポイントです。
また、種族の面でも海賊はそこまで強くないと思います。

なお、データは「1ターン目にプレイしたとき」の平均順位であり、初手に抱えた場合は計上対象外と思われます。そのため、この順位は参考程度に。

 

 

【下位】

レイザーフェンの地霊術師こんがり焼けルボア(ランク外)

単体スペックとしては悪くありません。ただ、その先に強い構成を組みにくいのが大きなマイナスです。
キルボアはうまく組めれば強いのですが、「針だらけな笛吹き」を早い段階で引けないと形にならない感じがあり、安定感に欠けるのが下位の理由かと思います。

針だらけな笛吹き

 

王のプラグを抜きし者(13位)・マジウザ・オ・トロン(ランク外)

キルボアと同様に、カード自体の質というよりも、現環境でメカが弱いことが足を引っ張っています。こういう弱い球団のエース選手みたいなカードは、装飾品環境では避けるのがおすすめです。

 

最後に

装飾品環境の初手選択で特に重要なのは、「このカードが強い最終構成につながるか?」という点です。序盤の安定性やコイン得も重要ですが、その先に強い構成がなければそこそこのカード止まりになります。

 

ただし、今回示した序列はあくまで執筆時点(2026年5月1日)のものです。まだまだエレメンタル、悪魔の2強ともいえる状態であり、きっと近いうちにバランス調整がなされると信じてます。

そうなれば強い種族は変わり、それに応じて強い初手も変わっていきます。そんな時に参考になるのが、HSReplay.netにてトッププレイヤーのjeefが解説している構成ごとのTierリストです。

hsreplay.net

環境が変わればまたグレード1ミニオンの位置づけも大きく変わりますが、そんな時も今回説明した知識は活きるはずです。「今の環境で強い種族は何か?」を起点に初手を考えることが、装飾品環境を攻略するカギになります。