That's Arena!

ハースストーンの闘技場・バトルグラウンドを勝ち抜く戦略

なぜ初手の「無害なボンクラ」は強いのか? ――バトグラで重要な「受け」の話

(ハースストーン バトルグラウンドの記事です)

1ターン目の酒場に以下のミニオンが並んでいます。どれを取りますか?

無害なボンクラロックプール・ハンター

 

私は圧倒的に「無害なボンクラ」が強いと思っています。単体の戦闘能力は低くても、以降の強いミニオンにつながりやすいからです。順を追って説明していきましょう。

理由1:低グレードのミニオンとの相性の良さ

「ボンクラ」は単体性能は弱く、1ターン目、2ターン目の戦闘は負ける、あるいは引き分けることがほとんどでしょう。しかし、グレード2~3あたりのアンデッドと極めて相性が良く、3ターン目以降は序盤に失ったライフを挽回するほど強くなれる可能性がそれなりにあります。

特に、「墓所の暴食者」との組み合わせが非常に強力です。毎ターン「ボンクラ」、そして断末魔から出てきたトークンを食べさせ続けることで3ターン後には19/18という巨大なミニオンができ、ライフを守りながらグレードをどんどん上げていくことができます。

無害なボンクラ

 

暴食者を引けなかったとしても、他にも強いコンボがあります。自身を合わせ3体分のアンデッドとなる「ボンクラ」は、下のような「アンデッドの攻撃力を上げる」カードと非常に相性がいいのです。

死群のネルビアンキレ餓鬼 | ハースストーン名鑑 - ゲームウィキ.jp

 

近年のバトルグラウンドでは特に、ミニオンの単体性能ではなく複数体のミニオンの効果をコンボさせて戦う傾向が顕著になったと感じています。強いコンボの前提になるカードを序盤に抑えておくことは、非常に価値のあることです。

配信などでは、このようなコンボの前提が「受け」と呼ばれていたりします。例えば「ボンクラは暴食者とかキレ餓鬼の受けになる」といった感じで、多少単体としての性能が低くても強い組み合わせの片割れになれるミニオンは高く評価されます。

このような組み合わせが1通りしかなければ狙いづらいものとなりますが、「ボンクラ」のようにグレード2、3に居る複数のミニオンと相性がよければ分の良い賭けになります。

 

理由2:アンデッド自体が最終構成として強い

ここまでが「ボンクラ」の強い理由の半分です。もう一つ重要なのは、こうしてできた中盤の構成がさらに最終盤の強い構成の「受け」になっているということです。

 

現在の環境では、「亡者家令モローズ」を使った構成がとても強いです。取った直後から(+2/+6)という大きな強化を蘇りにより2回行うことができ、さらに「大リッチ・ケルスザード」とのコンボで毎ターンモローズを、ひいてはゴールデンのモローズを増やし続ける動きが非常に強力です。

 

※最終的にこんな感じになります。壮観!

 

さて、このように強い「モローズ」ですが、単体で活躍するミニオンではありません。「モローズ」を取れてからアンデッドをかき集めても、間に合わずにライフがなくなってしまうことは珍しくないでしょう。

しかし、大きな「墓所の暴食者」や、アンデッド複数体+「キレ餓鬼」という構成が既にできていればどうでしょうか。取った直後から「モローズ」を強く使うことができるのでライフを守れますし、一からアンデッドを探す必要もないので「ケルスザード」や「タイタス・リーヴェンデア」といったコンボパーツを探しに行く余裕ができます。

 

このように、「ボンクラ」という受けがいるから取ることができた「暴食者」や「キレ餓鬼」が、さらに「モローズ」のような勝負を決めるミニオン「受け」となります。このように最終構成に使われるミニオン、特に環境で強いミニオンにつながりやすいということが「暴食者」の評価を高め、ひいてはそれを可能にする「ボンクラ」の評価を上げる理由になるのです。

もちろん毎試合このように上手くいくわけがありませんし、初手に取ったミニオンに縛られる必要はありません。ただし、「窮地の闘士」のように何の発展性のないミニオンの単体性能では戦えないのが今の環境です。「ボンクラ」のように「受け先が来れば強い」ミニオンをできれば複数持っておくことは、毎回は勝てなくても勝てる可能性を着実に高められる選択肢でしょう。

なお、2つ目の強みは環境次第なところがあります。例えば、ちょっと前まではアンデッドは強い構成といえず、仮にそのような環境に「ボンクラ」が現れたとしてもそこそこのミニオン止まりだったでしょう。重視すべきは強い最終構成につながりやすい中盤の動き、さらにそれにつながりやすい初手です。

ここで挙げた「モローズ」ですが、かなり強いため弱体化される可能性は大いにあります。そうしたら初手における「ボンクラ」の優先度も下げる必要があるかもしれません。

 

具体解説:グレード1ミニオンの格付け

ということで、序盤のミニオン選択では、 ①中期的に(グレード2,3あたりで)強い戦線を作れる、そして②最終構成(できれば環境で強いもの)の「受け」になる ようなミニオンを優先するのが良いことを解説しました。

ここまででおおむね言いたいことは言えました。具体的な理解のためにグレード1のミニオンをいくつか、主に「受け」の観点から解説したいと思います。

独断と偏見で、強い順に紹介しましょう。(2023/12/29時点)

 

1.「アップビートなリードボーカ竜」

アップビートなリードボーカ竜

最強の初手ミニオン。6ターン目までに2体のドラゴンを供給できるので、これを取るだけで中盤のドラゴン構成につながりやすいです。ドラゴンが最終的には強い構成にはなりにくい点は玉に瑕ですが、それでも初手としては破格の強さです。

1~3ターン目には恐らく負けることになりますが、4ターン目以降はほかのグレ1より少し強い盤面を、7ターン目以降にはかなり強い盤面を作れるので問題ないでしょう。

 

2.憤怒の織屋

憤怒の織屋

「ソウル・リワインダー」とのコンボが強い。ライフ損失なしで盤面強化をしつつ、将来の悪魔構成の「受け」にもなります。悪魔の環境におけるポジションによっては評価が落ちますが、今は強い種族なので「織屋」もかなり良い初手です。

 

ソウル・リワインダーダンスのプリンス・マルシェザール浮遊する番人

※「リワインダー」を引けず、他の悪魔を取らされても序盤なら許容範囲といったところです。序盤の2/1強化によって、戦闘に負けずに済んだり、負けたとしてもダメージ量を抑えることができたりするため失ったライフ分の活躍はしてくれるでしょう。

 

3~5.アンデッド3人衆(「マイクロマミー」はアンデッドがいる場合に限る)

無害なボンクラ蘇ったウルフライダーマイクロマミー

甲乙つけがたいですが、これらのアンデッドはどれも中盤に強い「暴食者」などの受けになり、さらに現環境トップクラスの「モローズ」につながりやすいのが良いです。ひょっとしたら織屋より強いかも?

「ボンクラ」はコンボ重視型、「マイクロマミー」は単体性能型、「ウルフライダー」はその中間といった感じです。なお「マイクロマミー」はアンデッドなしであれば評価が落ちます。

 

 

6.海鮮丼屋(ナーガ・獣の両方がいる場合に限る)

海鮮丼屋

単体でもそこそこいい戦力でありつつ、ナーガ・獣の両方がいると多くのグレード2ミニオンの受けにもなっているのがうれしいです。ただし、これらのミニオンは強い最終構成にはつながりにくく、中盤の戦力にとどまりやすい点がマイナスです。

溶岩に潜むものウミウシ騎士空腹のオオアゴガメ

 

7~9.コイン得ミニオン3種

貝殻収集家ウレメンタル南海の大道芸人

以前からバトグラを遊んでいた人は、これらの評価の低さにびっくりするかもしれませんが、今は中の上くらいかと思っています。(アンデッドが構成として弱くなれば、アンデッド3人衆より優先することがあるかもしれません)

前は最高クラスの初手でした。その理由は、3ターン目、5コインを使える時に「これらの雄叫び/売却で1コインを足し、2体のミニオン購入が可能になる」ということでした。

しかし、今は酒場に呪文(その多くは1~2g)が存在するため、これらを売却しなくてもコインを効率よく使うことができ、初手にこのようなコイン得ミニオンを買う必要がないというのが私の考えです。

 

そのような環境においては、「受け」の観点からいまいちなのが弱いです。グレード3までのコンボとしては、「南海の大道芸人」が「ギリガルル船長」「火薬の運び屋」などと相性が良い程度です。

ギリガルル船長火薬の運び屋

ただ、他に受けの狭いミニオンを買うよりは、これによって3ターン目に2体の別のミニオンを購入することで結果的にそれ以降の受けが広がることになります。それを勘案すると、他の弱いミニオンよりは依然として優先すべきでしょう。

また、3ターン目の酒場がいまいちだったり、早期にグレード3に行きたい場合にこれらのミニオンで1コインを捻出しグレード3に上げる、いわゆる「3on3」がやりやすいのはメリットです。現環境はそこまで3on3が強くありませんが、グレード3ミニオンが強くなれば初手コイン得の優先度は高くなるでしょう。

 

 

他にもグレード1ミニオンは10種くらいあるのですが、上に挙げたものよりは受け先が少なかったり、単純に戦闘能力が弱かったりするものです。なお、この辺りはヒーローパワー次第で時々上記より優先することがあります。

マジウザ・オ・トロンエメラルド・チビ始祖ドレイク

 

ここまでくると「窮地の闘士」の弱さもなんとなく伝わったかと思います。種族もなく、何の受けにもならないミニオンは、初手として最低クラスの評価になります。

(攻撃力を失うデメリットが無かったとしても、初手の上位には入れないかと思います。ゆえにヒーローが「ロカラ」で初手に取るプレイもあまり強くない気がします。)

窮地の闘士戦闘の栄光

 

また、グレード1ミニオンの強さの理由が受け先による以上、ミニオンの強化/弱体化、追加/削除次第で初手の評価もガラリと変わります。ここに示した評価は、ごく一時的なものであることに注意してください。

王道ハースストーン同様バトルグラウンドも調整がこまめに入るゲームであり、それに応じてこまめにグレ1の優先度も考え直すのがよいです。

 

ということで、上級者が重視している「受け」という概念の話でした。

バトグラ配信などで上級者のプレイを見ていると、発見などで欲しいカードを引き込んでいて「なんかこの人引きが良いな」という印象を抱くことがあります。ただ、そう見えるのは受けを作るのが上手く、多くのカードを強く使える体制が整っているからではないかと考えています。運そのものに個人差などないのですから。

迷ったときに受けの多いミニオンや、強い構成を受けられるミニオンを取れるようになれば、構成を上手く作りやすくなるかと思います。この記事が上達に役立てばうれしいです。