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ハースストーンの闘技場・バトルグラウンドを勝ち抜く戦略

ロビレジェ出場者を独断と偏見で語る(2023 Spring)

5/28~5/29に2023年最初の世界大会である「バトルグラウンド・ロビーレジェンド」、通称「ロビレジェ」が開催される。今年から制度が変わり、各サーバーの上位4名(+α)のみが参加できる極めて狭き門になった。

 

つまり、ここに出場するプレイヤーはいずれも強豪中の強豪だ。この記事では、彼らのうち筆者が知る日本勢について具体的に「どんなところが強いのか?」を独断と偏見で紹介したい。みなさんのロビレジェ観戦にちょっとした楽しさを添えられたら幸いである。

 

 

ペンギンさん

2022年最後のロビーレジェンド優勝者。その安定した実力は健在で、なんと今年1月、2月、3月のラダーでいずれも8ptを獲得、つまり全ての選考対象月で1位フィニッシュしている。

(出典)HSEsports Leaderboards Points

 

なぜこんなに強いのか? ペンギンさんは見ていて不思議なほどに下位落ちしない。そもそもロビレジェプレイヤーは下位落ちが少ないものだが、彼の安定感はその中でも際立っている。

彼の配信を見るたびに、自分の盤面や卓の状況を鑑みた押し引きの判断が抜群に上手いと思わされる。1位を狙えそうな局面では強欲にリスクを取る一方、ライフが少なかったり、他に大暴れしているプレイヤーがいたりする時は無理をせずに堅実な選択肢を選んでいる印象だ。そのような見極めをするために、他の同卓者の情報をきわめてよく観察する様子が見られる。

「攻めるべきときに攻め、そうでないときに守る」と文字にするのは簡単だが、それを恐るべき精度で遂行できるのがこのプレイヤーの強みであり、圧倒的な戦績の理由なのだろう。

 

 

このような感じで、今回のロビレジェに出るトッププレイヤーの面々について、配信などから読み取れる強みを書き連ねていく。

「弱点はないのか?」と思う人もいるかもしれないが、このレベルの選手たちに目立った弱みなんてほとんどないし、そんな中で私ごときが独断と偏見をベースに弱点を書くのは筋違いであろう。この記事は「ここがすげえ!」で埋まることを許していただきたい。

 

MATSURI

言わずと知れた人気配信者。

日本のHearthstone配信で最も多くのリスナーを集めており、国内はもちろん海外からの人気も高い。人気だけでなく実力もずば抜けており、第6回ロビーレジェンドの準優勝者である。

あらゆる技術のレベルが高いプレイヤーであるが、その中でも終盤の対策は抜群に上手い。これはMATSURIさんのリスナーも同じような印象を持っているのではないか。彼のtest配信をよく見る人であれば、劣勢の中でも対策カードの選択と配置でワンチャンスを作って1位を取る場面を何度も見てきただろう。

また操作もめちゃくちゃ早い。現環境は「突風トランぺッター」や「艦隊提督テティス」がぶん回ればコインが尽きない状況に入るため、この操作速度は確かなアドバンテージになる。

突風トランぺッター艦隊提督テティス

 

今回のロビレジェは日本時間の深夜開始で日本人には厳しいスケジュールだが、24時間越えの超長時間配信を頻繁に行うMATSURIさんならきっと大丈夫だろうと信じている。

 

 

あれっくす(MEGA AlexJP)

前期(シーズン9)NAサーバー最終1位フィニッシュ、レートはなんと17006。

Leaderboards - Hearthstone

配信をすることは少なく、また筆者とは別のサーバーでプレイしているため詳しいプレイスタイルは不明。昨年のロビレジェ練習会やそれ以前のシーズンで同卓した経験からは、若干アグレッシブ寄りな印象を持っている。

彼は常人には理解しがたいヒーロー選択、ミニオン購入、そしてアグレッシブなグレ上げを行う。古くはバトグラ黎明期の5gグレ3上げ、イセラの開拓、取憑鬼スターの活用など、先進的な戦術でバトグラをリードし続けてきたパイオニアである。

各々の行動の「なぜ強いか」は私には理解しきれないが、結果としてどのような環境でもトッププレイヤーであり続けている。見えている景色が違うのだろう。

この独創性は環境初期の大会において大きなアドバンテージになると考えられ、どんな構成で勝利を掴むのか今から楽しみだ。

 

梁瀬(やなせ)

2022年第7回ロビーレジェンドの優勝者。配信、イベント開催や情報発信を頻繁に行っており、日本コミュニティを盛り上げている1人である。

実戦はもちろん配信視聴、議論による戦術研究に余念がなく、あらゆるヒーローの勝ち筋を知っている選手である。環境初期で情報が行き渡っていない今大会において、この知識量は勝敗を分ける強みとなるだろう。

それでいて、主要な勝ち筋一本にとらわれない柔軟性も備えているように見える。配信を見ているとヒーローや手持ちミニオンに縛られず、残りライフや酒場、発見、相手に応じて柔軟な方針転換をしており、その機転に驚かされることが多い。

やなせさんは「ぷよぷよ」のプロゲーマーとしても活躍している。彼の配信やTwitterを見るとメンタル管理や相手との駆け引きに長けている印象を受けるが、それはプロゲーマーとしての経験がなせる業だろうか。知識だけでなく、勝負強さも兼ね備えたプレイヤーであろう。

 

 

ここまで4人の日本のプレイヤーを紹介した。なんと、残り12枠のうち日本勢はあと4人もいる。ちなみにこの8人のプレイヤーはいずれも1~3月で19pt以上の競技ポイントを獲得した。

この「19pt」がどれだけすごいかというと、「6pt(ラダーtop10フィニッシュ)が2回+7pt(top5フィニッシュ)が1回」でようやく獲得できるものである。きわめて安定的に最上位帯を維持しなければ出場が叶わない舞台であり、日本のプレイヤーが8人もこの水準に達しているのは驚くべきことだ。

 

(補足)公式サイトのポイント表。月末のランキング順位に応じてCompetitive pointsが付与され、1~3月合計の上位がロビーレジェンドに招待される。

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Climb the Ladder with Hearthstone Esports in 2023! - Hearthstone

 

テスラ

日本勢の中では新興派のプレイヤー。2021年夏にバトグラを始めてから圧倒的な速度で上達、次の年にはレート15000に上り詰めトッププレイヤーの仲間入りを果たした。

日本人プレイヤーのバトグラ配信を訪れるとけっこうな頻度で彼の名前を見る気がしており、密度の濃い学びを通じて急速に上手くなったのだろう。そんな学び方についてはテスラさん本人がnoteを書いている。上達を目指す人にはぜひおすすめしたい。

 

なおテスラさん自身は配信をあまりしておらず、詳しいプレイスタイルや特長を紹介することは難しい。私が同卓した限りではやや堅実寄りな認識であるが、言い切れるほどの回数はなく明言は避けたい。ただし、最終戦の対策が上手い印象があり、こちらに刺さるテックカードの選択によって1位を何度か奪われたと記憶している。

いずれにしろ、その卓越した力量は彼の戦績が示すところである。果たして新環境のロビレジェでどんなプレイをするのか楽しみである。

 

Satellite

2022年第4回ロビーレジェンド第3位。環境を問わずアジアサーバーのトップ層に居続ける日本屈指の強者。

プレイスタイルはややアグレッシブ寄りで、1位、2位の頻度がかなり高い印象である。ただし、それが単なる博打でないことはレーティングや大会の戦績が証明している。

同卓したり配信を見たりしていると、ミニオンの組み合わせや配置に関する引き出しがとにかく多いと感じる。それも最終構成のみならず序中盤の組み方を含めてである。毎ターン限られた選択肢の中で強い盤面を作るのが巧く、それによって守ったライフが大胆なプレイを支えているのだろう。

また、厳しい勝負の中でワンチャンスを作るのも上手だ。最後の1対1などにおいて100%勝つことが無理でも、勝率を極力高められる選択肢を的確に選んでいる印象を持つ。Satelliteさんの配信では「運だけw」「運操作やめろ」のような遊び心あるコメントが流れることもあるが、その選択が立派なスキルであることはきっとリスナーも承知であろう。

 

Alutemu

構築の元グランドマスター。バトグラでも世界トップレベルの実力を持っており、2022年は幾度となくロビーレジェンドの予選、本戦に出場した常連であった。

Alutemuさんの強さを一言で表すとしたら「緻密さ」だろうか。ヒーロー選択、グレード上げ、どのミニオンを切るかなどの様々な局面にて、一般論で思考停止することなく、様々な選択肢を時間の許す限り考え抜いているように見える。また、普段われわれが適当に処理しがちな手札の使用順やコイン計算、バフ効率などの要素もぬかりなく考え、よりよい選択肢を追求し続けているところがよく見られる。

これは文字にすると当たり前のように思われてしまうかもしれないが、このような一つ一つの判断を極めて高いレベルで徹底しているのがこのプレイヤーの強さではなかろうか。

この人も10時間を軽々超える長時間配信を頻繁にする。配信は深夜帯をまたぐことも珍しくなく、深夜の大会でも遜色ないパフォーマンスが期待される。

 

白うさ

バトグラリリース直後からずっとトップレベルで戦い続けている超実力派うさぎ。前シーズンの最終レート(アジア)は15600を超え、これは日本人の中で最高値である。

1位の頻度がかなり高い印象である。基本的に強い勝ち筋を追い求め、それを強く使うスタイルと見受けられる。過度な妥協や日和りをしないようにリスクを見極めた上で、勝つための最短距離を進むのが上手いのだろう。

このように基本的には骨太なプレイングをしつつも、たまに7ゴールド目にグレ2に居座ったりなど(※バディ・クエストがいない環境で)、型にとらわれない選択肢を選ぶので見ていて興味深い。定石から外れ、使いどころが限られるようなテクニックも要所要所で使いこなしているように見える。

過去にはガラクロンドというグレ上げ、方向性選びともに極めて幅の広い、言い換えれば難しいヒーローで著しい結果を出しており、これも彼の柔軟性のなせる業なのかもしれない。総じて、的確なリスク管理と柔軟な発想によって高い1位率を実現している選手であろう。

 

海外プレイヤーも精鋭ぞろい

日本からのプレイヤーは以上である。この8人がそれぞれ並外れたスキルを持つプレイヤーで、誰が優勝しても不思議でないことが伝わればうれしい。

ただし、残る8人もまた引けを取らない海外の精鋭ばかりだ。あらゆる技能に卓越した欧州最強プレイヤーのXQN、一見無茶に見える超アグレッシブプレイながらなぜか安定した戦績を誇るBeterbabbit(既にレート14000に到達している…)、極めて丁寧なプレイで的確にアドバンテージを積み上げ続けるLiiなど世界屈指のプレイヤーが集まっている。わずか3ゲームの準決勝で半数が脱落してしまうのが実に惜しい。

 

これだけ日本勢が集まるとその活躍ばかり期待してしまいがちだが、ロビレジェは海外のプレイヤー、特にあまり知らなかった強豪を知るよい機会でもある。世界最高峰のプレイングを楽しみたい。

 

最後に

このロビーレジェンドは今週末5/29(日)、5/30(月)の両日AM1:00に開始される。詳しいルール、組み合わせなどは公式サイトを参照してほしい。

配信のリンクは以下である。公式配信はPlayhearthstoneチャンネル[英語]で行われ、また非公式で日本人によるミラー配信も行われるとみられる。

 


 

長い文章になってしまったが、これはもちろん日本人が8人も進出したのが理由であり、筆者の落ち度ではないため許していただきたい。

この記事によって彼らのすごいところが伝わり、今晩から始まるロビレジェの楽しみを少しでも広げられたらうれしく思う。