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ハースストーンの闘技場・バトルグラウンドを勝ち抜く戦略

科学するバトグラ:5コイン目グレ3上げをすべき種族

バトルグラウンドの現環境(2022/8/6時点)では、5コイン目にグレード3に上げて、以下のような強力なミニオンを探す動きが主要な戦術として取られています。しかし、この5コイン目グレ3上げは序盤に受けるダメージが大きく、使いどころを誤ると負けに直結するプレイでもあります。

荊使いハジキロボ

 

この記事では統計データを用いて、5コイン目グレード3上げをするべき種族BANとそうでない種族BANについて考察していきます。

 

(筆者実績)

バトグラの記事を書くのは初めてなので、筆者の戦績について簡単に書きます。

執筆時点のレートは13200(アジアサーバー23位)です。主にグレード上げの基準を見直して以来1ページ目(アジアサーバー25位以上)に安定して残れるようになり、この記事ではそのコツについて解説していこうと思います。

 

 

導入:グレード上げの種類

この記事では、5コイン目グレ3上げ、すなわち「4コイン目にグレード2、5コイン目にグレード3」に上げる動きをそれぞれのコイン数を取って「4-5上げ」と呼ぶことにします。同じように、俗にいうスタンダードカーブは「4-7上げ」、ラファームカーブは「6-7上げ」、7g2連上げは「7-7上げ」と呼びます。

それぞれのメリット、デメリットについては詳しくは触れませんが、参考までに下に整理しました。必要に応じてご覧ください。

 

 

この中でも使う機会が多く、一般的なヒーローで主な選択肢になる4-5上げ、4-7上げ、7-7上げの勝率を種族BAN別に比較していきましょう。

※6-7上げについては「ラファームのような使うヒーローではほぼ常に使う、そうでないヒーローではあまり選択肢にならない上げ方」であり、比較を簡単にするためここでは触れません。

 

各マナカーブの勝率比較

4-5上げ、4-7上げ、7-7上げについて、全種族BANの平均に加え、特定の種族がいる場合の平均順位を下の表にまとめました。この表をもとにいろいろ考えてみましょう。

 

*バトグラ技術部データ分析班より、2022/7/1クロマ削除後~8/6現在のデータ。*1

 

まず、全BAN平均の順位は4-5上げが一番低く、4-7上げ、7-7上げはそれぞれ同程度です。そのため、総合的に見ると4-5上げは他に比べて少し弱めの動きであろうと言えます。

しかし、その平均順位は種族BANによって大きく変わります。4-5上げに適する種族、そうでない種族を見ていきましょう。

※ちなみに、データ数を鑑みると0.01単位の順位差は誤差の範囲、0.1程度差があると強さに違いがあるかもしれない、0.2以上違うと高い確率で強さが違うという解釈ができます*2

 

 

4-5上げに適する種族

悪魔、メカ、キルボアがいるときは、4-5上げと4-7上げの平均順位が同じくらいです。盤面によっては積極的に4-5上げを考えてよいでしょう。

 

キルボアはグレード3のミニオンがどれも強く、メカも「鉄の師匠」「ハジキロボ」が当面のテンポと将来性を兼ね備えた優秀なミニオンです。そのため、これらのミニオンに早くアクセスできる4-5上げの勝率が上がるのは納得です。

特にメカとキルボアの両方がいる場合は「宝石割るボア」による構成が非常に強く、それを早く獲得するために4-5上げをする価値が高くなります。

ハジキロボ宝石割ルボア

 

悪魔の勝率が高いのは意外でした。グレ1,2がさほど強くないのに対し、グレ3には「カスラナティール」「ソウル・ジャグラー」のようなそこそこのスタッツと将来性を併せ持つ駒がいます。また、「魂食らい魔」で少し大きいミニオンを作れると序盤の勝率が安定します。

4-5上げの判断において悪魔を評価基準に入れている人は少ない印象ですが、データを見てみると4-5上げの追い風だったりするようです。

カスラナティールソウル・ジャグラー

 

4-5上げをしないほうがいい種族

一方、獣、エレメンタル、マーロック、ナーガがいるときは4-5上げが4-7上げより0.2前後低い順位となっています。これらの種族が3種以上いる卓では、4-5上げの優先度を下げたほうがいいでしょう。

 

ナーガ、マロ、エレメンタルは4-7上げの勝率が最も高いです。グレ3が相対的に弱く、グレ2が相対的に強いのが理由だと考えられます。

ナーガは「ウミウシ騎士」や「溶岩に潜むもの」がそれぞれグレ2ながら毎ターン成長し続ける優秀なミニオンで、グレ2を回る大きな理由となります。グレ2の各種マーロックは将来性は低いですが、序盤の戦力としては悪くありません。

また、獣、エレメンタルは7-7上げの勝率が良いです。グレ1を長く回って「ウレメンタル」や「野良猫」のトリプルを作り、高グレードの発見を行うのが強いためと考えられます。獣は「下水ネズミ」も優秀で、グレード2を回ることも良い選択肢だと考えます。

ウミウシ騎士溶岩に潜むものウレメンタル

 

 

まとめると、種族ごとの4-5上げの優先度はこのような感じでしょうか。

  • メカ、ボア、悪魔(のうち2種以上)がいる:4-5上げの優先度を上げる。(ただし、勝率は4-7上げと同等であり、4-5上げを決め打ちするほどではない。盤面とヒーローを見て柔軟に判断する)
  • ナーガ、マロ、エレ、獣(のうち3種以上)がいる:4-5上げの優先度を下げる。
    •  ナーガがいる:4-7上げを主に考える
    •  エレ、獣がいる:7-7上げを選択肢に入れる(ただし、必ずやるほどは強くない)

 

もちろんこれはヒーロー選択にも深くかかわる話です。例えばメカ、ボア、悪魔がいて4-5上げが強ければ、「ゲイルウイング」や「コックのクッキー」のような4-5上げを得意とするヒーローの優先度は大きく上がります。反対にエレ、獣がいるようなときは7-7上げでトリプルを狙うのがよく、「スキャブス」や「レノ」のようなヒーローの優先度が上がります。

一例として、各マナカーブに適した代表的なヒーローを示します(あくまでマナカーブ適性を示したものであり、強さの評価ではありません)

試合開始時にはBANを見てどのマナカーブが強いか考え、強いマナカーブに適したヒーローの優先度を上げることを考えています。

Tiermakerより。4-7上げは汎用性が高く、ほかにも多数のヒーローで採用できる。

 

(追記)グレ1ドラゴン強化の影響

ここまでで基本的なところは解説しましたが、つい最近マナカーブに影響の大きい調整が入りましたのでその影響を考察します。

7/26のパッチで「チビレッドドラゴン」に強化が入り、「進化するクロマウイング」が新たな効果で帰ってきました。

チビレッドドラゴン進化するクロマウィング

現環境で猛威を振るっている2枚であり、この2枚がマナカーブ別の勝率にどのような影響を与えたのかを見てみましょう。

ドラゴンがいる場合の、クロマ復帰前後の勝率を下に比較してみました。さぞかし6-7上げ、7-7上げの勝率が上がっていることでしょう……



 

……あれ?

 

予想に反して、6-7上げ、7-7上げの平均順位はクロマ復帰により下がっています。代わりに4-7上げの勝率が上がり、最も平均順位の高い動きになっています。

考えられる理由としては、

  • (重要)グレ1ミニオンが1種増えたため、6-7上げ、7-7上げでトリプルを狙うことが難しくなっている。

  • このパッチにより主にメリットを得ているイセラやアランナは8,9コイン目にならないとグレードを上げないので、この表には含まれない。6-7上げをするような普通のヒーローがドラゴンを無理に狙い、むしろ平均順位を下げている。 
  • そもそもデータ数が不足しており、今後データが集まった時点で再評価が必要。今のデータ数では、±0.3程度ぶれても不思議ではない。

 

ということで、特にドラゴン集めに適性のあるヒーローでなければ1回しを行うことはむしろ悪手なのかもしれません。特にイセラやアランナ、スキャブスやテスと同卓する場合卓のクロマウィングを根こそぎ持っていかれるため、一般ヒーローでドラゴンを集めようとするのはリスクが高い選択になります。

したがって、適性のないヒーローであれば、よほどドラゴンが見えてない限りは1回しせず他のカーブをとるのが良いというのが現時点で読み取れる指針です。(ただし、上述した通り確固たる結論を出すにはデータが足りていないので、鵜呑みにせずに適宜判断いただけると嬉しいです…。)

 

最後に

ということで、種族BAN別にマナカーブの比較評価を行いました。

「ボア、メカがいると4-5上げが強い」というのはよく言われていることですが、データを見てみるとそれらに加えて悪魔も同じくらいのパフォーマンスであったことは意外でした。

また、逆に4-5上げの優先度が下がる種族としてはナーガ、獣、エレ、マロが挙げられました。ナーガについてはグレ3も優秀なイメージがあったため意外ではありましたが、グレ2がとても強いので言われてみると納得するところです。

 

このように、ただ回しているだけでは気づけない教訓を得られるのがデータ分析の良いところです。もちろんデータにはバイアスや分散がつきものです。この記事に書いたことも誤りがあるかもしれず鵜呑みにはしないでほしいところですが、それでも何かしら参考になれば嬉しいです。

(「こういう読み方ができるのではないか?」「この解釈は違うのでは?」などありましたら、適宜筆者のTwitterまでコメントくださるとうれしいです)

 

最後になりましたが、この分析はバトグラ技術部データ分析班の戦績データを用いて書かれています。データ提供者のみなさま、データを取りまとめてくださったみなさまに感謝します。

このデータ分析班ではデータ提供者を募集しており、少しだけ紹介させていただければと思います。

 

(補足)バトグラ技術部 データ分析班へのお誘い

「バトグラ技術部 データ分析班」ではプレイヤーたちが各々の戦績を共有しており、データ提供者として参加することでこの共有データを見ることができます。データにはヒーロー、順位、盤面、グレ上げターン、種族BANなどが含まれており、アイデア次第でこのような分析に限らず、多種多様な考察ができるようになります。

 

もしこのような分析をやってみたい方、あるいはデータを提供してくださる優しい方がいらっしゃいましたら、以下のDiscordに入ってみませんか?

 

discord.com

 

分析が終わったらこのようにブログを書いて共有するのも一手ですが、面倒であれば上のDiscordに共有するためのチャンネルもあります。ぜひ一緒に分析しましょう!

データ提供者になるためには、上のDiscordに入り一通りの注意事項をご覧になったうえで、管理者のchoxさんに「データ提供を希望します」との旨を伝えていただければと思います。

 

 

 

 

 

*1:途中いくつかの環境変化がありますが、データ数を確保するために敢えて集計期間を広く取っています。ただし、7/26のグレード1ドラゴン強化は各カーブの強さに大きく影響を与えるので、後でパッチ前後の勝率変化について評価します。

*2:統計好きの人へ:全BANの各マナカーブの平均順位について、70%信頼区間は±0.07程度、95%信頼区間は±0.15程度です。学術論文のように有意水準5%で何か主張できるほどのデータ数があることは稀ですが、少なくとも順位に0.2の差があれば有意である可能性が高いとみることができます。バトグラは環境の移り変わりが早くデータがたまりづらいため、ある程度のデータ数で「おそらくこうであろう」というような仮説を立てて試行錯誤していくアプローチが有効だと考えています。