(2020-11-14 近年の環境を踏まえて編集)
ハースストーン闘技場のドラフトでは、単体のカードパワーだけでなく、デッキとの相性を考えながらカードを選んでいく必要があります。ここが難しいところであり、また闘技場の醍醐味でもあります。
ドラフト前半は単純に強いカードを取っていけばいいのですが、ドラフト後半(15枚目以降)ではすでに取れているカードを踏まえた判断が求められます。
この記事では、ドラフト後半でどのようなことを考えてカードを選択すればよいかをおおざっぱに紹介します。
①単体でのカードパワー
最も基本的な判断基準です。出てくる3択の間に明確な強さの差があることが珍しくないため、カードパワーで判断すべき場面はそれなりに見られます。また、ドラフト前半などで、特にシナジーやデッキバランスを考えなくてもよい場合もカードパワーをもとに判断すればよいでしょう。
カードパワーの判断には、各種Tierリストや前に書いた記事を参考にしてください。
参考:HeartharenaのTierリスト 私自身は数あるTierリストの中で、このリストを一番信頼しています。
「じゃあ、カードパワーが近い場合はどうすればいいの?」
それを解説したくてこの記事を書きました。重要なのは他のカードとの相性、そしてデッキバランスです。順番に説明します。
②他のカードとの相性
数百枚のカードプールの中には、相性のいい組み合わせは無数にあるのですが、主要なものを大まかに紹介します。これらの組み合わせを、できれば複数組そろえられる場合カードの評価が上がります。
カテゴリシナジー
種族(ドラゴン、エレメンタルなど)、秘策、武器、シルバーハンド新兵などのカテゴリに対応して効果を発揮できるカードを指します。こういった組み合わせが揃う場合、多少のカードパワー差があってもシナジーのある方を取ります。
シナジーカードを評価するポイントとして、①シナジーの狙いやすさ ②シナジー効果が成功した時の強さ ③発動しなかった時の強さ があります。
例えば、≪的屋≫は秘策と一緒に手札にないと発動できませんが、発動できると2マナ分得することができ、また発動せずとも2/2/3ミニオンと及第点の働きをします。秘策が既に取れているときはぜひ取りたい1枚です。
一方、同じ秘策シナジーでも≪イセリアルの魔術師≫は使いにくいカードです。手札に秘策とこのカードをそろえ、さらに秘策が発動する前にこのカードを召喚しなければならないため、先の≪的屋≫と比べてシナジーを発動させにくいです。また、シナジーが発動した時はまあまあの強さですが、そうでなければ4/3/3というかなり弱いミニオンです。秘策がよほど大量に取れていない限り、選ぶ必要はないでしょう。
横並べカード+全体強化など
多数のミニオンを展開するカード(≪脱線コースター≫など)+場のミニオンが多いほど強いカード(≪ストームウインドの勇者≫、≪ダークムーンの像≫など)が当てはまります。
特に、ドルイド、シャーマンはクラスカードに強力な展開手段と全体強化カードの両方をもっており、この組み合わせを狙いやすいです。(展開手段には≪殻斗果流格闘家≫≪ルーン彫刻≫など、全体強化には≪獰猛な咆哮≫≪血の渇き≫などがあります。)
これらのクラスで、横並べ+全体強化の組み合わせを勝ち筋にするデッキを組むチャンスがあり、意識しておくと良いドラフトができるでしょう。
弱い序盤+逆転カード
≪フレイムストライク≫≪火吹き女≫≪鋼拾いのシヴァーラ≫のような不利状況で強いカードは、序盤の動きの質、量が心もとないデッキで活躍します。
高コストのコンボカード+軽量カード
ローグ特有のケースです。≪誘拐魔≫などは非常に強力ですが、「コンボ」能力のため、その前に使うカードが必要になります。自身が6マナとそれなりに重く、他のカードが重いといつまでたっても使えません。0マナ~2マナのカードを複数枚デッキに入れておくことが望ましく、それらの評価が上がります。
魔法活性+軽い呪文
「魔法活性」は、場にいるときに呪文を使うと発動できる能力です。「魔法活性」のミニオンが相手に除去される前に発動できるのが望ましく、ミニオンと同じターンに使いやすい軽い呪文を一緒に取りましょう。
変妖+重いカード
2020年11月に追加されたメカニズムで、「変妖」を持つカードが手札にあるとき、それより高いコストのカードを使うと「変妖」カードが強化を受けます。変妖したカードは非常に強力でぜひ狙いたい効果です。
5マナ未満の変妖はとくに意識せずとも狙えますが、5マナ以上の変妖を取った時はそれより高いコストのカードの優先度を上げましょう。特に、変妖カード+1のコストのカードを取ると、比較的早く変妖したカードをプレイできるのでお勧めです。
その他、特に強力な組み合わせ
上にあげた以外にも、強力な組み合わせは多数あります。相手の大型ミニオンを奪う ≪無気力の波≫+≪カバルの司祭≫や、使い終わった≪錆鉄騎の略奪者≫を≪転化≫で別の5コストミニオンにするなどが良い例で、もし片方がすでにとれていたらもう片方を取る優先度が上がります。
ただし、コンボパーツを複数デッキに入れるのが難しい闘技場では、両方のカードが都合よく手札に揃う確率は決して高くないです。そのため、単体でもある程度の活躍をするカードを取る必要があります。
悪い例は≪フロストノヴァ≫+≪終末予言者≫です。両方揃えば強力な組み合わせですが、それぞれは状況を大きく選ぶカードであり、闘技場ではあまりお勧めできません。
他にも組み合わせの例は多数あると思います。
ドラフトを進めていく中で、相性の良い組み合わせをどの程度見つけられるかがデッキの強さを決めるので、ドラフト中盤以降はカードパワーだけで判断せず、デッキとのかみ合わせを考えてカードを選択しましょう。
③早い/遅い相手への勝ち筋
これは海外の有名闘技場配信者、Shadybunny氏がよく主張する考え方をベースにしており、闘技場ドラフトで非常に重要なのでここで紹介します。
30枚のデッキの中に、どのような相手にも対応できる手段を持っておくことが必要です。ただし、9種類のヒーロー全てを仮想敵とすると考えが複雑になりすぎてしまうので、大ざっぱに「早い相手」「遅い相手」の2種類を考え、それぞれへの対応手段が十分揃うようにしています。
- 早い相手:ハンター、ローグ、デーモンハンターなど。序盤からミニオンを展開し、相手のライフをいち早く削る短期決戦を得意とする。
- 遅い相手:ウォーロック、プリーストなど。終盤に強いカードやヒーローパワーを持っており、長期戦に持ち込み相手の手札切れを狙う。
デッキを組んでいく中で、「片方の相手に対する勝ち筋は十分あるけど、もう片方に対して有効なカードが少ない」という事態にならないよう、バランスをとっていくことが必要です。
それぞれの相手に対する勝ち筋には、以下のようなものがあります。
早い相手への勝ち筋
1.序盤の強い動き
序盤に多くの、できれば優秀なミニオンを展開し、相手の攻めに対抗することが重要です。ミニオンだけでなく、軽量の武器も十分な対策になります。
能力値が十分な2.3マナミニオンがそれぞれ5枚以上あると良いですが、それだけの枚数を揃えるのが難しいこともあります。そういった場合は、下に書く手段で早い相手への抵抗力を備えることが重要です。
2.全体除去等
全体除去は相手が展開してきたミニオンを一挙に片付けることのできる手段です。早い相手には強力無比ですが遅い相手には腐りがちです。
また、全体除去の他にも≪鋼拾いのシヴァーラ≫のような相手の場に多くのミニオンがいる時に強いカードも、早い相手への対抗手段になります。
3.挑発、(急襲・除去)
相手の攻撃から自分のライフを守る手段になります。挑発は明確な防御手段で、粘り強く戦うことで相手のリソース切れを目指します。
また、急襲ミニオンや除去カードも良い防御手段です。劣勢の場合、普通のミニオンでは相手の都合の良いように戦闘されてしまう、あるいは無視されてヒーローを攻撃されてしまいますが、急襲ミニオンや除去カードは狙ったミニオンに干渉することができます。軽いミニオンが少なめかつ全体除去も取れないときは、これらのカードを集めてみましょう。
遅い相手への勝ち筋
1.重いカード、リソース供給
相手が全体除去や挑発、回復で粘ってきても、手札を切らさず攻めを続けるための手段です。
高コストのカードのほか、≪筆記の執精≫のようなカードを手札に加えるカードも当てはまります。仮に見た目のマナカーブが軽いほうに寄っていても、このようなカードが4-5枚取れていれば遅い相手に対するリソースは十分だったりします。画面下側に見えるマナカーブだけでなく、実際のデッキ内容を踏まえた判断をすることが重要です。
2.ヒーローへのダメージ
また、試合が長期化する前に終わらせるのも有効な対抗策です。単にヒーローにダメージを与えるだけのカードは使いづらく、ミニオン除去にも使える≪ファイアーボール≫や強化にも使える≪王の祝福≫などが良いです。
3.Win More(有利状態で強い)カード
相手の序盤はそこまで強くないため、優勢を作ることは難しくありません。その優勢を膨らますことのできるカードは、遅い相手に特に有効です。
≪野生の力≫や≪ボグストロクのクラッカー≫のような複数のミニオンがいるときに有効なカード、≪ガーディアン改造屋≫のような召喚酔いしていないミニオンがいるときに有効なカードが当てはまります。
注意点として、ヒーローへのダメージやWin Moreカードは、ある程度序盤、中盤が強くなければ機能しません。もしそうでなければ、遅い相手に対してはリソースが切れないよう戦うデッキにするのがよいでしょう。
ドラフト後半では、以上に述べた早い相手、遅い相手への勝ち筋が足りているかを確認し、足りていなければ優先的に補充することが大切です。なお、使うヒーローによってヒーローパワーやクラスカードの性質が異なるため、取りやすい勝ち筋が異なります。このあたりは使いながら覚えていくのが良いと思います。
注意点として、早い(遅い)相手への勝ち筋3つを全てそろえる必要はありません。例えば優秀な2.3マナミニオンが各5枚以上揃っており「1.序盤の強い動き」が整っているデッキであれば、早いデッキに対してある程度強く抵抗できます。
こうしたデッキでは「2.全体除去等」や「3.挑発、回復」はそこまで重要でなく、むしろ遅い相手に勝つための手段を集めることが重要です。全体除去は強力でありつい取りたくなりますが、軽いデッキで取りすぎると遅い相手への抵抗力が弱くなってしまいます。
まとめ
このような考え方で、①カードの単体性能だけでなく、②他のカードとの相性、③早い/遅い相手への勝ち筋を考えながら選択することで、完成度の高いデッキが組めるようになります。
ただ、②他のカードとの相性、③早い相手/遅い相手への勝ち筋確保 のさじ加減はすぐに習得できるものではなく、これを書いている私自身もよく失敗します。
上手くいったデッキ、いかなかったデッキを振り返ってドラフトを反省したり、成績の良いプレイヤーの配信から学んだりすることで、次第に良いドラフトができるようになるはずです。この記事が上達の助けになれば嬉しいです。